令和元年度広域連携事業「遠隔自治体間連携」を報告します。

令和元年度の広域連携事業は、「遠隔自治体間連携」をテーマに事業を実施しました。

本組合では、平成25年3月に「第5次置賜広域ふるさと市町村圏計画」を策定し、広域連携を基本方針に3市5町が一体となって解決を模索する基盤として、広域連携アクションプランを設定し、平成25年度から「新たな広域連携の研究・推進」をテーマに事業を進めてきました。

平成27年度から、本圏域の人口減少や少子高齢化など、様々に考えられる広域的な課題を検討するため、(一財)地域活性化センター(以下、「地域活性化センター」という。)から事業の支援を受け、広域連携の事例を学ぶこと及び広域で連携する土壌を醸成することを目的とした「広域連携事業」を実施してきました。
本事業の財源は、置賜3市5町と本組合の共同事業として、公益財団法人山形県市町村振興協会の市町村振興共同事業等助成金を活用しています。
また、平成30年度には、地域活性化センターと「地方創生に向けた人材育成に関する連携協定」を締結しています。

事業開始から5年目となる令和元年度は、置賜地域の広域連携を深めるため、テーマを「遠隔自治体間連携」として、昨年度の人と地域をつなぐ事業「24時間トークカフェ置賜」から住民同士の交流が始まった東京都港区に依頼し、港区と置賜地域の職員が遠隔自治体間連携を共に学ぶ人材育成事業を実施しました。

講師に、大杉覚教授(首都大学東京大学院)、前神有里氏(地域活性化センター人材育成プロデューサー)をお招きして、港区と置賜地域の職員が遠隔自治体間連携により何ができるか、研修やフィールドワークを通じて、共に学びながら検討してきたことを報告します。

 

◇第1回集合研修「広域連携のこの先を考える」

〇月日 令和元年7月5日(金)
〇場所 南陽市「赤湯公民館」
〇「地域活性化センターへの派遣を通じて学んだこと」片桐研二氏(小国町総合政策課政策企画担当係長)
〇「最上総合支庁の取組について」坂本健太郎氏(最上総合支庁総務課連携支援室主査)
〇「港区芝地区の取組について」辻剛久氏(港区芝地区総合支所協働推進課地区政策担当係長)
〇「遠隔自治体間連携の可能性と展望」大杉覚教授
〇「ワークショップで理解を深めよう」佐藤恒平氏(まよひが企画)

【第1回集合研修のまとめ】
大杉覚教授の講話から、遠隔自治体間連携とは、「共在(共に在る)」という感覚を広域的に共有し、都市と地方をゼロ・サム(パイの奪い合い)でなく、ポジティブ・サム(互いに支え合い、相乗効果を生む関係)で捉える発想が重要であることを学びました。また、役所内の縦割り、国と自治体、自治体間の行政界、行政と民間、行政と地域などの壁をしなやかに乗り越え、地域に関わる多様な人々で形成される全国規模から局地規模にまで至る様々なネットワークをフル活用できるような「越境する自治体職員」が求められていることを学びました。
佐藤恒平氏のワークショップを通じて、対話・会話の違いを理解すること、他者を理解する対話が重要であること、関係人口は相手を見極めて関係性を形成することを学びました。
辻剛久氏の講話から、港区芝地区の取組みと併せて、全国連携に必要なことを学びました。
片桐研二氏から、「地域活性化センターへの派遣を通じて学んだこと」、坂本健太郎氏から、最上総合支庁の取組みとして、「『最上地域政策研究所』、『ジモト大学』、『MOGAMIルーキーズカレッジ』」について、事例報告がありました。

 

 

◇第2回集合研修「港区と置賜の遠隔自治体間連携を考える」

〇月日 令和元年10月8日(火)から9日(水)
〇場所 東京都港区「芝公園区民協働スペース、芝の家、ご近所ラボ新橋」
〇「港区が進める全国連携の取組について」白石直也氏(港区企画経営部全国連携推進担当課長)
〇「港区フィールドワーク」辻剛久氏(港区芝地区総合支所協働推進課地区政策担当係長)
〇「講話・ワークショップ」坂倉杏介准教授(東京都市大学都市生活学部)
〇「遠隔自治体間連携の可能性と展望」大杉覚教授
〇「ワークショップ」前神有里氏

【第2回集合研修のまとめ】
白石直也氏の講話とフィールドワークを通じて、港区が全国連携によって目指す姿を知ることができました。
坂倉杏介准教授の講話とワークショップから、遠隔自治体間連携として、お互いを気にかける「共在」の感覚が必要なこと。社会はどんどん変化していることから、少し前の時代に最適化された仕組みは新しい状況の中でうまく機能しない可能性があるため、これまでの常識を手放して本当に実現したい未来を考えることが必要であることを学びました。
大杉覚教授の講話から、大都市自治体と職員の役割について、大都市部ならではの「創発可能性地域(都市)」を目指すこと。遠隔自治体間連携を通じて「創発可能性地域づくり」を高めあうことを学びました。
前神有里氏のワークショップでは、遠隔自治体間連携によって実現できること、実現したいことを様々な視点から話し合いました。

 

 

 

◇第3回集合研修「遠隔連携による地域創発」

〇月日 令和元年11月13日(水)
〇場所 南陽市「赤湯公民館」
〇「はじまりのワーク」前神有里氏
〇「港区を知る時間」白石直也氏
〇「遠隔連携による地域創発」大杉覚教授
〇「企画づくりワークショップ」前神有里氏

【第3回集合研修のまとめ】
前神有里氏の講話から、置賜と港区のこれからを考えることは、Well-being(いまの幸せ)からWell-becoming(どう幸せになっていくか)を考えることにつながること、Wellnessの8つの要素(身体・精神・社会・職業・金銭・感情・環境・知性)を意識することを学び、コミュニケーションによる他者理解は地域の連携にも役立ち、まち同士の感度を認識することは、この先の見えない未来を考えるために必要な要素となることを学びました。
大杉覚教授の講話から、「視点1:住民間交流のステップアップ(置賜・港区連携の起点である住民間交流の着実な展開が最優先であること。)」、「視点2:職員間ネットワークを豊かに(住民・地域ベース:新たな置賜・港区職員ネットワークを充実・強化すること。」、「視点3:持続可能な遠隔連携(遠隔自治体間連携とは「共在」感覚を広域的に共有すること。二重の「共在」関係(広域連携と遠隔連携)が「創発」効果を高める可能性があること。)」を学びました。
前神有里氏による「企画づくりワークショップ」では、発表された意見をもとに、次年度から進めていく遠隔自治体間連携について、これからの置賜と港区のありたい姿を考え、実施したいことを各グループで検討し発表しました。

 

 

 

◇第4回集合研修「遠隔連携による地域創発」

〇月日 令和2年2月21日(金)
〇場所 高畠町「浜田広介記念館 ひろすけホール」
〇「おきたま×みなと開港プロジェクト・ガイダンス」前神有里氏
〇「おきたま×みなと開港プロジェクト・プラン実践ワーク」大杉覚教授、前神有里氏
〇「ひとりのハートが世界を変えられる。~心のバリアフリーで誰もが住みよい社会へ~」加藤健一氏(山形バリアフリー観光ツアーセンター代表理事)
〇「人と地域をつなぐ事業から始まったこと」山田茂義氏(コワーキングスペーススタジオ八百萬代表)、齊藤幸恵氏(置賜四季の暮らし舎)、鈴木美恵氏(マザー&ベビーケアサロン ままのて)、前神有里氏

【第4回集合研修のまとめ】
前神有里氏の「おきたま×みなと開港プロジェクト・ガイダンス」では、今年度の取組みを振り返り、広域連携事業という人材育成事業を通じて、テーマを「遠隔自治体間連携」として、港区と置賜地域が共に考えてきたことが、「おきたま×みなと開港プロジェクト」の立ち上げにつながったことをあらためて確認しました。
「おきたま×みなと開港プロジェクト・プラン実践ワーク」では、来年度から取り組んでいく遠隔自治体間連携事業や、これからさらに議論を深めていくことができるような内容など、置賜地域と港区、双方の職員から多くの意見が出されました。
遠隔自治体間連携のきっかけとなった24時間トークカフェ置賜で、講師を務めていただいた加藤健一氏を招き、港区と置賜地域の多様な連携を考えるため、心のバリアフリーについて講演していただきました。ハード面とソフト面が伴って、真のバリアフリーへとつながっていくことを学びました。
本組合が置賜の住民を対象として実施している「人と地域をつなぐ事業」の受講者をお招きし、前神有里氏とのパネルディスカッションでは、本事業を受講した感想やここから派生して起こっていること、地域住民同士の交流が進んでいることなどについて、置賜地域と港区の職員に知っていただくことができました。

 

 

 

◇「おきたま×みなと開港プロジェクト」

令和元年度、広域連携事業のテーマである「遠隔自治体間連携」について、置賜地域の職員と港区の職員が相互に交流し、研修やフィールドワークを通じて、共に考えてきました。
そこから、新たな価値を創造し互いに豊かな暮らしを実現することを目的に、港区と置賜地域の遠隔自治体間連携を「ひと・もの・こと」が行き交う地域創発プラットフォームとして、「おきたま×みなと開港プロジェクト」を立ち上げることになりました。
来年度以降も、人材育成として広域連携事業を進めながら、様々な遠隔自治体間連携事業を実施していくため、本プロジェクトによる地域創発プラットフォームを展開していきます。